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世界の発酵食品シリーズ 第19回 ウォーターケフィア(ウクライナ、メキシコ)

 第19回 ウォーターケフィア(water kefir)

ウォーターケフィアグレイン
ぷにぷにした触感の豆粒ぐらいのゲルです

ウォーターケフィアはケフィアと名前が付いていますが、以前紹介した牛乳を原料にしたケフィアとは原料も発酵微生物も異なっており、ミルクの代わりに砂糖水を発酵させた飲料です。ただ、ケフィアと同様にグレインと呼ばれる粒状の微生物の凝集体を用いて発酵させる点が共通です。すっきりとした乳酸菌飲料で、動物性原料も不使用なので、菜食主義者も飲用できます。作り方も簡単で、グレインを砂糖水に混ぜるだけ!しかもグレインは半永久的に使い回せます!!手軽で美味しく健康的なので、今後ブームになりそうな期待の発酵飲料です。

ワイングラスに入れてみましたが、中身はウォーターケフィアです

材料

  • ウォーターケフィアグレイン (通販等で購入可)
  • 砂糖 70グラム
  • 水 1リットル
    砂糖水にグレインを投入、時々かき混ぜるだけで完成

作り方

  1. 砂糖を熱湯に溶かして砂糖水を作る
  2. 十分に冷めたら、ウォーターケフィアグレインを入れる
  3. 一週間ほど、一日一回混ぜて発酵させる。蓋は緩めて空気が入るようにしておく
  4. 好みの味になったら、グレインを網で漉して、ペットボトルなどに詰めて冷蔵庫で保存する。
  5. 回収したウォーターケフィアグレインは再び砂糖水に混ぜて、ウォーターケフィア発酵に用いる
    こちらは上白糖の代わりにキビ糖を用いた発酵
    個人的には上白糖の方がすっきりした甘みで好きです

解説

  • グレインの正体は乳酸菌の作り出す不溶性細胞外多糖(EPS)を中心に、酵母、酢酸菌が共生した凝集体です。
  • 乳酸菌はLactobacillus hilgardii、Lactobacillus nageliiが主であり、これらはグルカンスクラーゼ酵素を分泌します。このグルカンスクラーゼがシュクロースを分解してEPS・エキソポリサッカライドを生産します。これがゲル状物質の正体です。
  • グレインに含まれる酵母は主にSaccharomyces cerevisiaeであり、各種アミノ酸やビタミンを供給することにより乳酸菌の生育を促進させる。また、乳酸菌は乳酸の産生により、培地のpHを下げ酸性化させることにより、酵母の生育を促進させるという、相互共生を行っている。
  • 水ケフィアの起源には諸説あり、一説には1855年頃にクリミアから帰還した兵士によって英国に持ち込まれたといわれています、また、メキシコのサボテン(Opuntia)の葉に粒状で存在していたものが起源とも言われており、どうやら数系統のウォーターケフィアグレインが存在しており、構成する微生物の種類も若干異なっているようです。
  • グレインの名称も土地ごとに様々で、ウォーターケフィアグレインの他に、ティビスコ(Tibisco)、ジンジャープラントとも呼ばれています
  • ウォーターケフィアには砂糖水に加えて、フレッシュフルーツやドライフルーツを入れるレシピもあります。この中では乾燥イチジクを入れるとグレインの成長が促進されることが知られており、これはイチジクに多く含まれるカルシウムイオンが、グルカンスクラーゼの活性に必要であるからと考えられている。
  • ウォーターケフィアには様々な健康効果が報告されている。乳酸菌飲料であるため、乳酸菌のプロバイオティクス効果、細胞外多糖EPSのコレステロール、脂質吸着作用、酵母が産生する各種ビタミンやアミノ酸の効果、乳酸菌の産生する抗菌ペプチド・バクテリオシンの効果などが主である。
  • 乳酸菌の産生するバクテリオシンはCandida albicansSalmonella typhiShigella sonneiStaphylococcus aureusEscherichia coliといった微生物に対して抗菌活性を示すことが報告されています。また、ウォーターケフィアにはラジカル消去活性、抗酸化活性も認められており、ラットを用いた動物実験では、対照群と比較して血漿および肝の脂質プロファイルが改善され、その効果はミルクケフィアよりも効果的であるそうです。とはいえ、所詮砂糖水ですので、飲み過ぎには注意です(笑)
参考文
Kieran M.Lynch et al.An update on water kefir: Microbiology, composition and production. International Journal of Food Microbiology 345, 109128 (2021)



尾仲宏康

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