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世界の発酵食品シリーズ 第1回 ザワークラウト(ドイツ)

世界の発酵食品  

 微潜研では人の役に立つ微生物である放線菌の研究をしています。しかし、人々にとって有益な微生物は薬を作る放線菌だけでなく、他にも様々な微生物がいます。例えば、発酵食品はそのような有益微生物たちが作り出す食品です。冷蔵庫のなかった時代は人々は余剰な食べ物を腐敗菌から守り、長期保存するために、乳酸菌や酵母などの有益菌で発酵させていました。冷蔵保存技術が発達した現在でも、発酵食品は体に良い食品として、人々の健康を支えています。  

 というわけで(どんなわけだ?)、ここでは、東大所属の微生物研究者である私が実際に作ってみた世界の様々な発酵食品を専門的な知識も交えて紹介していきます。 

  第1回 ザワークラウト (sauerkraut)
 ザワークラウトはキャベツの酢漬けと思っている人もいますが、正しくはキャベツの塩漬けを乳酸発酵させた発酵食品です。材料は刻んだキャベツと塩だけですが、キャベツに付いていた乳酸菌による乳酸発酵により、日に日に驚くほど酸っぱくなります。ここでは彩りと香り付けのためにビーツとジュニパーベリーも加えています。紅く染まったザワークラウトはまるで梅酢漬けのようなフレッシュな酸味で病みつきになりますよ。
漬け終わって、小瓶に移した状態
材料 
  • キャベツ 一玉 
  • 塩 キャベツの重さの2.5% 
  • ビーツ(あれば)適量 (今回は真空パックの物を100 gほど使用)
  • ジュニパーベリー(あれば) ひとつかみ
黒い粒がジュニパーベリー(ジンに漬け込まれているスパイスです)濃い赤がビーツです。
今回は真空パックのビーツを半パック分使いました。


作り方 
  1. キャベツの外側の葉を取り、重さを量る。なるべく新鮮なキャベツを使う。 
  2. キャベツの重さの2.5%の塩を計り取る(1 kgのキャベツで25 gの塩が必要です) 
  3. キャベツを千切りにする。太さはお好みで。芯も入れる場合は細かく切る。 
  4. ビーツを5〜10 mm角のサイの目切りにする 
  5. 漬け込み用ガラス瓶(梅酒用の4L瓶を私は使っています)にキャベツ、ビーツ(汁も)、塩、ジュニパーベリーを加えてよく混ぜる。 
  6. しっかりと野菜を底に押しつけ、野菜から汁を搾り出す。上に重し(なければしなくても良い)を置き、ふたを軽く閉めて、涼しいところに放置する。 
  7. 翌日、塩の効果で野菜から汁がどんどん出てきますが、もし、野菜が完全に汁に漬かっていなければ、もう一度底に野菜を押しつけ、汁を搾り出して、野菜が完全に塩水に浸かるようにする。それでもだめなら、2.5%の塩水を加える。 
  8. 毎日少しづつ味見をし、たまに味を均一にするためにかき混ぜる。お好みの味になったら、冷蔵庫に移す。1週間程度で、酸味が発ち、素晴らしい味わいとなる。 

  解説 
  • ザワークラウトはキャベツに住み着いている乳酸菌が乳酸発酵することによって、酸っぱくなります。最初の2,3日はLeuconostoc mesenteroidesLactobacillus brevisが主に発酵します。これらはヘテロ乳酸発酵菌なので、乳酸を作ると共に、エタノールと炭酸も発生します。これによって酸っぱさだけでなく、香りや味わいも深まります。また、耐酸性がそれほど強くないので、自身の産生する乳酸によって酸性化が進むとより耐酸性の高いLactobacillus plantarum、Pediococcus pentosaceusに発酵がバトンタッチされます。これらの菌はホモ乳酸発酵菌のため、さらにより多くの乳酸を産生し、ザワークラウトが急激に酸っぱくなります。毎日テイスティングしていると酸味の変化が実感できると思います。 
  • 十分に酸っぱくなったザワークラウトはそれ以上酸っぱくさせないために、冷蔵庫に保存します。乳酸のたくさんある酸性環境では腐敗菌の繁殖防止効果もありますので、長期保存も可能です。ある書物には10年熟成させたザワークラウトを食べた例も記載されていました!ちなみに私は1年間冷蔵庫で熟成したザワークラウトを食べましたが、更に複雑な味わいでそれは素晴らしい一品でした。
  • ザワークラウトでは野菜に元からあるビタミンの他に、乳酸菌によって新たにビタミンが作り出されるため、生野菜を取るよりも栄養学的にも良いと言われています。もちろん、乳酸菌も豊富に取れますので、乳酸菌の作り出す抗菌性物質(RiPPsです)などの効果によって腸内菌叢のバランス改善、悪玉菌の低下にもつながります。

尾仲宏康

世界の発酵食品シリーズ一覧

微生物研究者が実際に作ってみた世界の様々な発酵食品を科学知識も交えて紹介


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  3. ケフィア https://mmp-lab.blogspot.com/2021/03/3.html
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